もっとも使いやすい調達方法
創業時にもっとも頭を悩ませるのは事業に必要な資金をどこから確保するかという点だと思います。インターネットを活用したウェブビジネスなど、大きな資金がなくても始められるビジネスも増えてきてはいますが、やはり事業を一定の規模に拡大させようと考えた時には、元手となる資金が必要となります。
資金調達は大きく自己資本によるもの、他人資本によるものに分けられます。そのほか、自治体からの補助金も含めると3種類の調達方法があることになります。資金調達、という言葉から株式発行をイメージする方も多いと思いますが、実際にいきなり株式による調達を行うケースは限られています。
ごく一部の、最初から規模の急拡大を狙ったスタート・アップ企業を除き、実際の創業時においては他人資本による調達、すなわち借入による資金調達が一般的です。その中でも特に、創業時に有利な条件で利用できる「公的融資」について説明します。
公的融資による資金調達
すでに軌道に乗っている事業で借入を行う場合は銀行や信用金庫といった金融機関から行うのが通常ですが、創業時には一般的な借入は難しいのが現実です。ビジネスの実績がなく、その会社の信用力が形成されていないので、資金の貸付サイドとしてもどの程度のリスクをとることができるのか、見積もることが難しいためです。昔は、場数を踏んだバンカーの「眼力」のようなもので思い切った貸付が行われるケースもあったと聞きますが、最近では金融機関のリスク算定もシステマティックに行われ、形式的な要件を満たさないと一律的に弾かれてしまうことがほとんどのようです。
そのため、創業時には「公的融資」という制度に頼ることが賢明です。「公的融資」といってもいくつか制度があるため、その代表的なものを紹介していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は新規開業資金という名称の融資を行っています。融資限度額は7,200万円と大きく、借入期間も最大15年となっているため、比較的規模の大きな設備投資が必要な事業を開始するのに向いている制度です。ただし、利用するには以下のような一定の条件が必要です。
次のいずれかに該当される方
1.現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1)現在お勤めの企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
2.大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
3.技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
4.雇用の創出を伴う事業を始める方
5.産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
6.地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方
7.公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
8.民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
9.1~8のいずれかを満たして事業を始めた方で事業開始後おおむね7年以内の方
利率について詳細はこちらに記載がありますが、一般的な借入よりも有利な条件となっています。
商工中金
商工中金は「中小企業等協同組合その他主として中小規模の事業者を構成員とする団体及びその構成員に対する金融の円滑化を図るために必要な業務を営むことを目的とする。」とされており、主に中小企業向けのサポートを行っている公的金融機関です。商工中金は再チャレンジ支援貸付という名称の融資を行っています。この名称からは創業のイメージがわきにくいかもしれませんが、新規創業も対象となっており、利用条件は以下のようになっています。
過去に事業に失敗した経歴のある経営者の方で、再度、事業経営にチャレンジするため新たに開業する事業者、または開業後おおむね5年以内の事業者の皆さま
このように、事業失敗からの再チャレンジのみならず、新規開業の事業者も含まれています。
制度融資
制度融資とは、自治体による融資の制度です。制度の内容は自治体によって区々なので詳細は各自治体にお問い合わせください。ここでは例として東京都の制度融資を取り上げます。
東京都の創業時における制度融資はこちら(PDF注意)で確認することが可能です。
要件も簡単に抜粋しておくと、以下のとおりです。
事業を営んでいない個人であって、1 か月以内に新たに個人で又は 2 か月以内に新たに会社を設立して都内で創業しようとする具体的計画を有し、原則として事業に必要な許認可等を受けている方
融資限度額は2,500万円ですが、自己資金に1,000万円を加えた金額が上限となっていることに留意が必要です。
まとめ
創業時に利用できる公的融資について、代表例をまとめました。
公的融資は、いくら利率が低く負担が軽いといっても、最終的に元本の返済が必要です。この点、返済が不要な株式や補助金とは異なります。利用のハードルが低いからといって安易に利用して返済不能に陥る・・・なんてことのないよう、事業計画は入念に立てておくことが必要です。