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株式会社?合同会社?起業に際して会社形態を選ぶポイント

ゴールから決める

最初から会社形態で起業する場合、悩むのが会社形態(会社の種類)だと思います。

特に深く考えずに株式会社! というパターンも多いかとは思いますが、本当に自分のビジネスに合致しているでしょうか。実際の設立手続に入る前に、いちど落ち着いて考えてみましょう

結論を先取りしてしまえば、ビジネスのゴールから逆算して決めるのがポイントとなります。

会社法で認められている会社形態

株式会社はもっとも広く知れ渡っていますが、会社法では、4つの会社形態が認められています。大きく株式会社と持分会社にわかれ、持分会社は合同会社、合名会社、合資会社に分類されるので、合わせて4種類となります。

ただ起業実務の場面で用いられるのはほとんどが株式会社と合同会社なので、今回はこの2つに絞って解説します。

株式会社

会社といえば株式会社、というくらい知れ渡っている会社形態です。2006年の会社法改正前には有限会社という形態があり、いわゆる中小零細企業の多くが採用していて身近な存在でしたが、法改正により株式会社に移行したため、見かけることはなくなりました。

その名が示す通り、株式会社を理解するうえでの最重要ポイントは株式です。

株式とは、株式会社における社員(注:いわゆる従業員ではありません)の地位のことです。この株式を保有している人が株主です。会社は誰のモノか? といった議論がときどき生じますが、純粋に法律上の観点から言えば、(株式)会社は株主のモノ、ということになります。株主は株式を通じて議決権(株主総会で決議に票を投じる権利)を得たり、配当を受ける権利を得たりします。

株式の最大の特徴は、その種類ごとに均一に細分化されている点にあります。均一というのは、同じ種類の株式であれば、その内容が同一であることを意味します。Aさんが持つ1株もBさんが持つ1株も内容は異なりません。細分化されているというのは、その投資単位が比較的小さいということを意味します。例えば1億円の資金を調達するとき、1株を1万円に細分化して1万株発行すれば1億円になります。1万円出資してくれる人を1万人集めてもよいし、100万円出資してくれるのであれば100人で済みます。株主は、その資力に応じて出資し、その出資に見合った権利を得るわけです。

株主の地位は、有限責任であるため、リスクは出資額に限定されます。要するに、会社が莫大な負債を負って倒産したとしても、出資した金額以上の支払が生じることはありません。

ふたつめの特徴として、所有と経営の分離が挙げられます。

上述の通り、あくまで会社の所有者は、出資者である株主です。しかしながら、その会社を実際に経営するのは株主から委任された取締役です。株主は必ずしも経営についての能力があるわけではないので、経営のプロである取締役に実際のビジネスを任せるわけです。このようにしてお金を出す人(所有)と実際のビジネスをする人(経営)が分かれることを所有と経営の分離と言います。

このふたつの特徴から、株式会社は規模の大きい会社に向いていると言えます。株式の投資単位を下げることで、多額の資金調達をしやすくし、一気にビジネスを拡大することが可能です。また、出資者とは別の優秀なプロ経営者を据えることもできます。

合同会社

日本版LLCと言われているのが合同会社です。アメリカのLLCを模範として作られた制度ですが、課税関係についてはアメリカ本国と異なっているので留意が必要です。すなわち、アメリカのLLCはパス・スルー課税(法人ではなく、社員への直接課税)が認められていますが、日本の合同会社では株式会社と同様に法人課税しか認められていません。

株式会社が社員の地位を株式という均一な単位に切り分けているのに対して、合同会社の社員の地位(持分)は社員毎に区々です。株式会社の場合は、株式の保有割合に応じて議決権や配当が決まることは上述しましたが、合同会社では出資割合とは無関係に議決権割合、配当割合を決めることができます。このことにより、出資(お金)は出せないけれど、専門的な技術力で会社に貢献する、という人に対して多くの配当を与えるなど、インセンティブに柔軟性を持たせることができます。なお、出資者が有限責任である点は株式会社と同様です。

また株式会社では所有と経営の分離を想定していますが、合同会社では出資者である社員がそのまま業務執行すなわち経営をハンドリングすることになります。株式会社で求められる取締役会、監査役会といった機関設計も不要で、柔軟な組織構築が可能です。

この特徴から、合同会社は株式会社に比べて規模の小さな会社に向いていると言えます。個人事業主(フリーランス)の法人化はもちろん、市場からの多額の資金調達が不要な子会社やジョイント・ベンチャーなど幅広く活用できる会社形態です。

会社選びのポイント

これら特徴を踏まえて、株式会社と合同会社のどちらを選べばよいでしょうか?

よく、費用面や事務手続きの煩雑さを比較してどっちがいい、というような解説をしているところもありますが、どちらかというと些末な理由だと考えます。より重要なのは、これから始めるビジネスのゴールをどこに置くか、という点です。

最初からIPO(株式公開)を目指す企業であれば、株式会社の一択です。合同会社は上場することができません。最初から明確なプロダクトやサービスがあり、起業後のアーリー・ステージから多額の投資資金を得て一気にマーケットシェアをとり、数年で上場、こんな絵を描いているのであれば株式会社が適しています。

またIPOではなくても、どこかほかの企業への売却(M&A)をエグジット戦略として見据えている場合も株式会社がよいでしょう。買収価格の算定にあたって、やはり株式という投資単位があったほうが、算定もしやすく、売却交渉がスムースに進みます。

一方、それ以外の会社は、スタート段階では合同会社を選ぶのがスマートな選択ではないでしょうか。組織としての柔軟性、運営の簡便性に利がありますし、IPOやM&Aというビジョンさえ意識しなければ株式会社に比べて実務の面で不便な点はありません。一時期は、株式会社に比べた知名度の低さから取引先に嫌われる、なんてことが言われたこともありますが、06年の会社法改正から約10年がたち、合同会社(LLC)という存在も十分に認知されてきていると感じます。

なおスモール・ビジネスとして始めるつもりで合同会社を選んだが、途中から規模拡大を目指して株式会社にしたい、という場合でも合同会社化から株式会社へは簡単に移行できます。

まとめ

株式会社と合同会社を選択する際のポイントをまとめました。

くりかえしになりますが、ビジネスのゴール次第で選び方は変わる、という点が重要です。なんとなく株式会社、と考える前に、合同会社を選ぶメリットを十分に検討する余地はあるかと思います。

今回は抽象的な内容になったので、実際の設立時の手続や費用などについては別の記事で解説します。

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